冬枯れの山中に
「艶やかな色」

2023年11月20日
 
今回のお軸は「霜葉紅於二月花」(そうようは じげつのはなより くれないなり)
中国の詩人・杜牧(とぼく)が詠んだ漢詩「山行」の一部で、
役人であった彼が、晩秋の山を訪ねたときのことが描かれています。
 
遠 上 寒 山 石 径 斜
白 雲 生 処 有 人 家
停 車 坐 愛 楓 林 晩
霜 葉 紅 於 二 月 花
 
前句、停車坐愛楓林晩(くるまをとどめて そぞろにあいす ふうりんのくれ)
から読み解くと、
私は車を停めて、なんとはなしに楓の林の夕暮れを眺めている
霜がかかって赤く紅葉した葉は、二月に咲く桃の花よりずっと赤々としている。
 
この句に出会い、思い起こす情景があります。
箒をにぎる手は冷たく、かじかむような朝、
寺の庭先に立つと鮮やかな色が目に飛び込み、ハッとします。
よく見ると、それは霜にうたれたもみじやイチョウ。
赤や黄色の紅葉であったのです。
 
段々と色彩がなくなる季節であっても、
自然は息づき、思いがけない美しさを見せてくれるものです。
 

※出典…「山行」(さんこう)
 
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