晩秋の朝に見る
「雨音の正体」
2023年10月20日
今回の「開門落葉多」(もんをひらけばらくようおおし)は、
私には親しみ深い、とても実感のある句のひとつです。
一見、秋の訪れを告げるかのような句ですが、対句とともに味わうと、
秋が深まる時季のことを詠っているのだとわかります。
「聴雨寒更盡(あめをきいてかんこうつき) 開門落葉多」
夜更け過ぎ、雨の降る音を聴いてひとしおもの寂しく思ったが、
今朝になって門を開いてみたら、あたり一面落葉でいっぱいだ。
一晩中雨の音だと聴いていた音が、朝になって見ると、
実は落ち葉が軒先に散る音であったと知るのです。
山中に住まう、物静かで趣ある風情と寂寥。
そして一夜にして生まれた、深まりゆく秋の美しい世界が見えるかのようです。
毎朝、「雲頂菴」の山門を開くと、待っているのは一面に広がる桜の落ち葉。
ご存知ないかもしれませんが、桜の落葉は晩夏の緑葉から始まり、師走の頃まで続くのです。
掃いても掃いても、翌朝はまた…「開門落葉多」というわけです。
※出典「大燈国師語録」
「住職だより」に戻る