ひと目で連想する
「秋の月の美しさ」

2023年9月5日
 
夏の暑さが過ぎ去り、しのぎやすい夜が長くなってくる頃に思い浮かぶ、
「吾心似秋月」(わがこころはしゅうげつににたり)
 
秋風のそよぐ、澄み渡った空気の夜空にくっきり輝く月。
なんと美しいことでしょう。
私の心もこの月のごとく、丸く円満でありたいものだと願うのです。
 
「吾心似秋月」の後には、「碧潭清皎潔」(へきたんきよくしてこうけつ)と続き、
私たちの心とは、まるで秋の明月のように円満無欠であり、
その月が深く青々とした池を照らし、清く輝いている」。
この作者である寒山は、自分自身の心と向き合えば向き合うほどに、
結局は何ものにも比べることはできず、言葉で表し尽くすこともできない。
と、深い悟りの心境を自然の姿に託して詠んでいます。
 
今回のお軸は、江戸後期・臨済宗の僧、象匏文雅(ぞうほうもんが)によるもの。
一筆で描かれた大きな丸は「円相」(えんそう)といい、禅では「心」をあらわす書画のひとつです。
この円相があることで、視覚的にも秋の月の美しさを一層感じさせてくれるのだと思います。
 
 
※出典『寒山詩』
 
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