お彼岸は今の自分にも心を寄せて

2023年3月15日
 
春のお彼岸が近づいてまいりました。
お彼岸(春分・秋分)の中日は、昼と夜の長さが等しい日で、暑くも寒くもない。仏教の教えでは「中庸」にあたります。中庸とは、一言でいうと「片寄りのないこと」です。
お釈迦さまは自らの苦行の中で、物質的にも精神的にも恵まれていても満たされず、何も無いところに身をおいても癒されないと感じます。その両極を体験したことで、何より「中庸」を大事にしなければいけないと悟るのです。
では、片寄りのないこと、その心をもって生活するにはどうしたらよいのでしょう。
そこで、日々の指針となる行い「六波羅蜜(ろっぱらみつ)」をご紹介しましょう。
これは全てを行うというわけではなく、どれかひとつでもいいので、日常生活の中でできそうなことを実践していけばよいのです。
『布施』(ふせ)皆に恵み施しをする。「和顔愛語(わがんあいご)」という言葉があるように、笑顔を見せるだけでもよいのです。
『持戒』(じかい)…ひとつひとつのルールを大切に守る。
『忍辱』(にんにく)…屈辱や苦痛に耐え、穏やかで寛容な心を得る。
『精進』(しょうじん)…自分の心を整え、与えられた道を歩む努力をする。
『禅定』(ぜんじょう)…ひとつの物事に集中して、迷いや動揺を鎮める。
さらに、これらの行い全てを含んだ『智慧』(ちえ)というのがあります。
先の5つの事柄を実践し、体験や経験を積みながら、それらを理解しよう、身につけようと祈る。そんな中で様々な気づきが生まれ、やがて中庸を得るのです。
六波羅蜜を締めくくる『智慧』は、お釈迦さまの教えそのものといえましょう。
お彼岸の時期は、ご先祖様に思いを馳せるとともに、今を生きている自分自身にも心を寄せる良い機会です。
「六波羅蜜」を意識して、日々穏やかで片寄りのない生活をしているか、改めて立ち返る。
そんな思いを持って過ごしてみてはいかがでしょう。
 
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