ご生誕を祝い、花の宗教を思う
2023年4月1日
新入学生や新社会人の姿をまぶしく感じる季節がやってきました。
4月8日は仏教の開祖・お釈迦さまの生誕を祝う「灌仏会(かんぶつえ)」が行われます。
「花まつり」といったほうが親しみがあるかもしれませんね。
この日は円覚寺でも、たくさんの花で飾り付けた小さなお堂「花御堂(はなみどう)」の中央に「誕生仏」をそなえ、「甘茶」をかけてお釈迦さまの誕生日をお祝いします。
お釈迦さまは旧暦4月8日、インドのルンビニ(現・ネパール南西部)でお生まれになったとされています。
花御堂は、そのルンビニのお花畑のような場所を模したものといわれ、甘茶をかけるのは、お釈迦さまが生まれる際、天から九頭の龍があらわれ、甘露の雨を注いだという言い伝えに基づくものです。
灌仏桶というたらいのような器に安置されている「誕生仏」のポーズをご存知でしょうか。
お釈迦さまは生まれてすぐに7歩あゆみ、右手は天を、左手は地を指さし「天上天下唯我独尊」(てんじょうてんげゆいがどくそん)と説いたと言われます。これは仏教の一番基本となる考えでもあるのです。
この解釈は文字だけ見ると誤解を招きやすく、簡単に説明するのも難しいのですが、私が考えるに
「この宇宙いたるところで生を受けたものは、何ものにも代えがたい唯ひとつの存在であり、この命は、何かひとつでも加える必要もなく、ただそのままで尊いもの」。
お釈迦さまの誕生から生涯を紐解くと、私はつくづく「仏教は花の宗教」だなあと思うのです。
花や豊かな緑に包まれるように生を受け、長い苦行ののち、一本の菩提樹のもとで悟りを開く。その教えをオアシスのような場所で広め、最期は沙羅双樹の花に見送られるようにしてお亡くなりになります。
お釈迦さまの人生の節目ごとに、いつも花々が寄り添う様子は、想像するだけで美しく、平和で穏やかなぬくもりを感じます。これこそ仏教ならではのものでしょう。
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