一日一日が最上
「今日を大切に生きる」

2023年6月20日
 
今回の掛軸はご存知の方も多い有名な一句です。
「日々是好日」
読みくだすと「日々是れ好日(にちにちこれこうにち)」
一般では「ひびこれこうじつ」とも読まれています。
唐の禅僧、雲門文偃(うんもんぶんえん)によるもので、『碧巌録』に収められています。
文字通りには「毎日が良い日」となりますが、これを読み解けば、
晴れの日も雨の日も、楽しい日も辛い日も、その一日一日が最上最高。
今日という日は二度とない、かけがえのない日である。
これには、私の師匠から教わった話があります。

江戸時代の京都、南禅寺の門前にふたりの息子を持つおばあさんが住んでおり、
その長男は傘屋を、次男は下駄屋を営んでいました。
そのおばあさんは、雨が降ると下駄が売れなくて次男は困っているだろうと心配し、
晴れの日が続けば、傘が売れずに長男の商売はあがったりだと嘆くのでした。
それを聞いた住職は「いやいや、それは考えが逆だよ」とおばあさんに言います。
「雨の日には長男の傘が、晴れの日には次男の下駄が必要となる。雨の日も良し、晴れの日もまた良し」。
 
晴れの日があれば、雨や嵐の日もあるように、人生とはもともと苦しみや喜びが伴うものであり、
笑ったり、怒ったり、泣いたりという日も、何かと比較したり固執せずに、あるがままに受けとめよう。
過去や未来を思い煩うことなく、今日という一日、今この時のみを大切に生きること。
それはやがて、心安らかに自身を天命にまかせ、どんな時にも動揺しない境地へと導いてくれるだろう。
実はこのような教えが込められた「日々是好日」。
目にする機会も多いと思いますので、あらためてその真意とともに心に留めてみてください。
 
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